毛利 | 中年の紳士 |
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和子 | 25才ぐらいの美人 |
*** 車の止まる音 *** | |
和子 | 「あら、お隣のおじさんじゃありませんか。これから お出かけですの。」 |
毛利 | 「ええ、少しおそくなったんでタクシーを待っている ところです。」 |
和子 | 「じゃ、よろしかったら駅までお送りしましょう。 どうぞ。」 |
毛利 | 「ありがとうございます。じゃ、おことばに甘えて。」 |
*** ドアをあけ、しめる音、発進の音 *** | |
毛利 | 「なかなか運転がおじょうずですね。しかし、女性に 運転させて乗っているなんて、ちょっと恥ずかしい な。」 |
和子 | 「そんなことありませんわ。女が運転するのは別に 珍しくなくなりましたもの。」 |
毛利 | 「そういえばそうですね。自動車も多くなったが女性 のドライバーも多くなった。わたしらの子供のころ は、女性が自転車に乗っても、女のくせにと非難さ れたものですが、このごろは自動車は運転する、山 には登る、スポーツはやる、女性の解放も進んだも のですね。」 |
和子 | 「ええ、ずいぶん進んだように見えますが、でも 実際はそれほどでもないんですよ。自動車でも、 ちょっと見るとずいぶん女性が多いようですけど、 小さい車だけで、大きいの、たとえばトラックな んかとなると、女が運転することはめったにあり ませんもの。」 |
毛利 | 「ああ、なるほど。女性も若い人はいろいろなスポーツ や外の仕事をしますが、中年以上の人はあまりしま せんね。わたしは山が好きでよく山に登りますが、 女性の登山客はたいてい若い人ばかりで、未婚の人 たちらしいんですよ。結婚してしまうとなかなか外 へ出られないんですね。」 |
和子 | 「そうでしょうね。結婚してしまうとだめになる人が 多いですね。男性の責任ですわ。」 |
毛利 | 「和子さんも近いうちに結婚されるそうだが、だいじ ょうぶでしょうね。」 |
和子 | 「ええ、でも子供ができるとめったに外へ出られなく なるでしょうね。」 |
毛利 | 「そうかもしれませんが、これからは社会が進歩して 生活がもっと便利になりますから今までより女性も ずっと自由になりますよ。… … あ、もう駅ですね。 おかげでずいぶん早く着きましたよ。どうもありが とうございました。」 |
和子 | 「いっていらっしゃいませ。」 |
*** ドアをあけ、しめる音、発進の音 *** |